5Gのサービス提供に向けての動きが加速している。5Gの登場により、新たなICTを活用したサービスが提供されるようになり、社会に大きなインパクトを与えるとされている。5Gにより何が変わるのか、5Gを利用する側からの観点でまとめてみたいと思う。
記事の目次
なぜ無線でのアクセスなのか?
まず、なぜ無線でのアクセスが必要なのか整理しておきたい。移動通信システムで使用される無線アクセスは、通信の末端の部分を担っている。キャリア回線を使用した無線接続では、通信機器からキャリアの基地局までが無線による接続であり、基地局間は通常は光ファイバーによる光アクセス回線での接続になる。無線アクセスは、通信の末端の部分において、有線接続による設置場所の制約を取り払うために使用される。
5Gの特徴
LTEと比較し、5Gの特徴を整理する。5Gでは、これまでの無線アクセスの課題を大きく解決することになり、新たなサービスの提供を可能とする。
大容量化
LTEの1000倍以上のユーザーを収容する。
高速化
LTEの100倍を超える高速化を図る。(1GBps以上)
低遅延
遅延を無線部分のみで1ms以下とする。(事実上遅延なし)
多接続
LTEの100倍を超える機器を接続可能とする。
低価格
IoTなど小容量しか使用しない通信もあるため、通信の品質に応じた価格で提供する。
低電力消費
IoTなど外部電源を使用できない機器が接続されることがあるため、低電力消費で利用可能とする。
5Gの活用例
5Gによって実際にどのようなサービスが提供される予定なのか、現時点で予想されるサービスの例を挙げる。
高画質画像配信
スポーツ観戦の例が挙げられる。より高画質であったり、多数の視点からの画像を楽しむことができるようになる。⇒高速、大容量が重要である。
自動運転
自動車の自動運転の例が挙げられる。ドライバーの情報、交通の情報や自動車の機器からの情報など様々な情報を集約し、その情報に基づいて安全に自動運転を行う。自動車間で通信を行い、隊列を組んで走行するなどの応用がある。⇒多接続、低遅延が重要である。
日常生活の支援
個人の行動予定、天気情報、交通情報などから、最適な行動がとれるように日常生活を支援する。様々な機器等から収集した情報を集約し、そのデータを元に個人にサービスを提供する。⇒多接続が重要である。
VR・AR・MR
VR・AR・MRを活用して、リモートの機器の操作などを行う。⇒高速、大容量、低遅延が重要である。
ドローンの制御
ドローンによる自動配達など、多数のドローンの制御に利用する。配達に関するドローンへの指示や、ドローン同士の衝突回避の自動化などを行う。多接続、低遅延が重要である。
5Gの役割
5Gの活用例に見るように、5Gのサービスを利用する側は、新サービスを提供するにあたり新たな技術開発を行う必要がある。5Gは新サービスに必要な土台部分の役割を担う。5Gは自動車の自動運転など、社会にとって重要なサービスを提供することになるため、ネットワーク障害がより起きにくい仕組みにする必要がある。また、サービスの要求に応じて、帯域の分配を自動的に行うネットワークスライシングなどの要求も生まれてきている。
総括
5Gによって、様々な機器がネットワークに接続され、情報を送信、あるいは相互に通信を行いながら動作するようになる。機器から送信された情報は、蓄積、分析され、その結果がまた機器の制御に使用される。5Gの活用から見えてくるのは、社会の様々な活動がICTによって自動化されていく未来の社会の姿である。ICTにより自動化された社会で、人自身がどのような役割を担う主体となるのであろうか。個人的には、ICTによって自動化された社会の状態や在り方が適切なもであるかを判断し、発生した問題や課題に対して適切に対応していく能力が求められていくようになるのではと考える。
補足
IoTが求める通信サービスの要件は、センサーによる測定データの送信など、小容量、低価格、低電力であることが多い。5Gは免許が必要な電波帯を使用する規格であり、機器の価格が高くなる傾向がある。小容量、低価格、低電力消費に特化して、免許の必要ない電波帯を使用したLPWA(Low Power Wide Area)と呼ばれるネットワークの構築が5Gと並行して行われおり、IoTに関しては小容量であれば、LPWAが選択される可能性がある。